堆肥で野菜栽培に適した土作りをする
1.堆肥は土壌改良に優れた有機物
家庭菜園をしていると堆肥(たいひ)という言葉を耳にすると思いますがどのような物質なのかわかりますか。
堆肥とは土の状態を良くする土壌改良材のことです。
一般的には、肥料をたくさん土の中に施しておけば野菜は大きく育っていくと思われていますよね。実際は適量よりも肥料を多く与えすぎると、実がつかなかったり病害虫の発生が多くなり野菜に悪い影響が起きることをご存じでしょうか。
野菜は、土の中に根っこを大きく張って、適量の肥料(養分)、水分、酸素を吸収して徐々に生長していきますので、野菜が大きく育つようにさせるには、肥料を多く与えるのではなく、土の中に根っこを大きく張り巡らせるように硬い土ではなく軟らかい土を作ることの方が重要になります。
野菜を育てる場所の土を軟らかくするにはスコップなどで耕せばいいのではと考えつきますが、土質自体を軟らかくするには耕しただけでは変わりませんよね。
そこで、土質自体を軟らかくする為に野菜を育てる場所の土に堆肥という有機物を混ぜ合わせるという方法が簡単なのでよく使われます。
有機物とは何かというと動物や植物の体を作っている物質のことです。燃やすと二酸化炭素を発生させます。
堆肥とは微生物によって植物などの有機物が分解され腐植(ふしょく)が蓄積してできたもののことです。堆肥の構造は繊維質なので手で触ってみると軟らかくてふかふかしており、土がふかふかしていれば土の中に隙間ができるので野菜の根っこが大きく張れる環境が整います。
また、土の中に有機物が混ざっていれば微生物やミミズなどの土壌生物が住み着くようになり、微生物は有機物の分解、ミミズは土の中を耕して排泄物が土壌の団粒化に役立ち地力を高める効果があります。
微生物は有機物を分解・無機化して野菜の根っこから養分を吸収できるようにする役割がありますが、土の温度が低いと有機物の分解量は低くなります。
春・夏・秋・冬の内で微生物による有機物の分解が著しく低下する季節は冬なので、冬に有機物を土に投入する方は気をつけてください。
※土の温度が15℃以上になると微生物の活動が増え、25~35℃になると微生物の働きは活発になります。
野菜を育てる場所の土に堆肥を投入した初期の頃は有機物を蓄積しているので土は黒色をしていますが、時間が経過すると微生物に分解され野菜の根っこから養分が吸収されていくと土は黒色が薄くなっていくので、1m2当たり2kg(5~10L)の堆肥を毎年投入するようにしてください。
堆肥はふかふかして微量ですが肥料成分やミネラルを含んでいます。その他の特徴としては、水はけ、水持ち、肥持ち、通気性が良いことです。
堆肥は土壌を改良するには適していますので、ぜひ、堆肥を使って地力を高めて健全な野菜作りを心がけてください。
2.堆肥の種類と使い方
堆肥は、次のように、鶏ふんや牛ふんなどの動物性の堆肥とバークや落ち葉などの植物性の堆肥の2種類があります。
- 動物性の堆肥:鶏ふん堆肥、牛ふん堆肥、豚ふん堆肥、動物性の有機質が多いぼかし肥料
- 植物性の堆肥:バーク堆肥、落ち葉堆肥など
では、動物性の堆肥と植物性の堆肥はどのように使い分ければいいのかというと、
- 動物性の堆肥:窒素、リン酸、カリなどの肥料成分を土壌に補う為に使う
- 植物性の堆肥:土質を改良し軟らかくして、水はけ、保水力、保肥力、通気性を高める為に使う
というような使い方をしてもらえれば問題ありません。
要するに、動物性の堆肥は土壌への肥料成分の補給が目的で、植物性の堆肥は土壌改良することが目的ということです。
なお、完熟した堆肥が完成するには、糖を分解する細菌やカビ、植物の繊維を分解する放線菌、植物の木質を分解するキノコ(担子菌)が活発に働かないとできません。未熟な堆肥を土と混ぜ合わせると、害虫が寄ってきたり病気に掛かりやすくなるので、完熟した堆肥を土と混ぜ合わせるようにしてください。
未熟な堆肥は分解過程で土の中でアンモニアガスが発生したり、窒素不足になったり、酸素不足になり野菜の根を傷めやすいので土と混ぜずに土の表面に施して使ってください。
また、動物性の堆肥を過剰に土と混ぜ合わせると害虫や病原菌が増えることがあるので施肥する量に気をつけて使いましょう。
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3.土の色を見れば有機物(腐植)が多いか少ないかわかる
土を構成している元素は、酸素とケイ素で約80%、そこに水素とアルミニウムを含めると、この4つの元素のみで90%以上を占めています。
酸素、ケイ素、水素、アルミニウムは無色透明なので、4つの元素の次に土の構成割合が多い鉄が土の色に関係してくるといわれています。
また、土に蓄積されている有機物(腐植)の量でも土の色は決まります。
- 黒っぽい色の土
- 有機物(腐植)が多く繊維質で肥沃な土壌です。手で触るとふかふかしていてやわらかく、水はけ、保水性、保肥性、通気性が良いことが特徴です。
- 赤や黄っぽい色の土
- 有機物が少なく鉄(酸化鉄)が多く痩せている土壌です。水はけが良いですが乾燥しやすく保肥性が悪いという特徴があります。
- 白っぽい色の土
- 有機物が少なく鉄(酸化鉄)が少なく痩せている土壌です。水はけが良いですが乾燥しやすく保肥性が悪いという特徴があります。
このように、土の色は、有機物や鉄の量で、黒くなったり、赤くなったり、白くなったりしますが、美味しい野菜を作るのに適している土の色は黒色です。
土の色を見れば土壌が肥えているのか痩せているのか、水はけ、保水性、保肥性、通気性が良いのか悪いのかがわかります。
土の色が黒くなければ土壌が痩せているので、鶏ふん堆肥、バーク堆肥などの有機物を投入してから野菜を育ててください。
堆肥には有機物(養分)が蓄積していて、土の色が黒いと腐植が多く、有機物が多い程軟らかい土ですので、野菜を大きく育てるには堆肥などの有機物を土にバランスよく配合されて地力を高めることが重要です。
4.堆肥で水はけ、保水性、通気性を向上できる
土の構造は、土の三相分布といって、次のように、固相、液相、気相で成り立っています。
- 固相:無機物の土粒子や有機物のこと
- 液相:水の空間のこと
- 気相:空気の空間のこと
液相と気相は固相との隙間(土と土の隙間)にできる空間のことで、土と土との隙間が、水はけ、保水性、通気性に大きく関係しています。
また、土には単粒構造と団粒構造があり、それぞれで特徴が異なります。
- 単粒構造
- 土の粒子そのものの状態の構造のこと。粘土のように土の粒子が重なり合って大きな塊となり隙間がない土壌、砂土のようにびっしり重なり合って隙間がない土壌のことです。水と空気のバランスが悪い状態です。
- 団粒構造
- 土の粒子がいくつか集まって小さな塊を作った状態の構造のこと。その塊の中で大小の隙間ができる土壌のことです。水と空気のバランスが良い状態です。
固相率が高くなると液相と気相の空間は少なくなるので保水性が低く乾燥しやすい土、固相率が低くなると液相と気相の空間は大きくなるので水持ちはいいがいつまでも湿っている土となります。
このように、単粒構造か団粒構造かによって、水はけ、保水性、通気性に大きな影響がでるので、固相、液相、気相のバランスが良い土の構造、すなわち、単粒構造の土よりも団粒構造の土の方が野菜栽培に適した土となります。
団粒構造の基本用土は赤玉土ですが、赤玉土に植物性のバークや落ち葉堆肥を混ぜると、保水性、保肥性、通気性はさらに良くなります。
5.堆肥で保肥性を向上できる
一般的な野菜作りに適した微酸性や弱酸性の土壌はマイナスの電荷を帯びていて、水に溶けた肥料成分はプラスの電荷を帯びています。
※プラスの電荷を持つ肥料成分は、アンモニア、カリ、石灰(カルシウム)、苦土(マグネシウム)などです。
マイナスの電荷とプラスの電荷は吸引し合う性質があるので、土の粒子と水に溶けた養分は吸着するようになり土の中で保持していますが、粘土、堆肥(腐植)などの有機物はプラスの電荷を吸引する量が多いといわれているので、堆肥を土に混ぜ合わせると水に溶けた肥料成分が流れ出すのを抑えて保肥力が上がるようになります。
土壌の保肥力が上がれば、野菜の根に供給できる養分を切らすことがありませんし、水やりや大雨で今まで無駄に流されていた肥料がとどまるように改善できるので肥料の節約にもつながります。
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