化学肥料の種類・特徴・メリット・デメリット
1.化学肥料って何ですか?
野菜などの植物に使う肥料を材料の違いで大きく分けると、次のように化学肥料と有機質肥料の2種類に分類できます。
- 化学肥料:化学的に合成して作られた無機質肥料のことです。
- 有機質肥料:有機物といわれる動物(骨粉など)や植物(油かすなど)を原料として作られた肥料のことをいいます。
※動物のふんや植物の樹皮を発酵させたものは堆肥といいます。
野菜などの植物を栽培する時は、肥料の3要素が必ず必要となります。肥料の3要素とは、窒素(葉肥)、リン酸(実肥)、カリ(根肥)の3種類の成分のことで植物の生長には欠かすことができません。化学肥料では、窒素成分は空気中の窒素から、リン酸とカリ成分は自然にある鉱石から作られます。
化学肥料の肥料成分は無機質の形で配合されているので、肥料を土壌に混ぜ合わせれば水に溶けた養分は野菜の苗の根からすぐに吸収できるという特徴がありますが、有機質肥料は土壌に混ぜ合わせた後に微生物の力を借りて有機質を分解してもらわないと野菜の苗の根から水に溶けた養分を吸収できません。
したがって、肥料を土壌に混ぜ合わせてすぐに肥料効果が現れるのが化学肥料で、2週間くらいして肥料効果が現れるのが有機質肥料です。
化学肥料は肥料効果がすぐに現れるので万能肥料だと思ってください。
2.化学肥料の硝酸態窒素は毒があるってホントですか?
有機質肥料に興味がある方は硝酸態窒素という言葉を聞いたことがあると思いますが、硝酸態窒素は人間の体に摂りこまれると亜硝酸に変わり酸素欠乏などの害を及ぼす物質として知られていますよね。
最近では、有機質肥料で野菜を育てるよりも化学肥料で育てた方が硝酸態窒素が野菜に多く蓄積すると噂されています。
しかし、硝酸態窒素について勘違いされている方がみえますが、化学肥料のみが硝酸態窒素の形で野菜の苗の根から吸収されるのではなく、有機質肥料でも硝酸態窒素の形で根から多くの養分が吸収されますので、化学肥料に限った問題ではありません。
なぜならば、畑の植物は硝酸態窒素なしでは大きく生長できないからです。
※水田の植物はアンモニア態窒素を根から多く吸収します。
有機質肥料は土壌の微生物(硝化菌)が分解して硝酸態窒素にしているので肥料の効き目が遅く、化学肥料は初めからアンモニア態窒素や硝酸態窒素の無機質になっているので肥料の効き目が早いという違いだけで、どちらの肥料でも結局は硝酸態窒素の状態で野菜の苗の根から多くの養分が吸収されます。
このように、化学肥料には毒があり有機質肥料には毒がないということではありません。どちらの肥料でも過剰に与えすぎることが問題なんです。
土壌に施した窒素の養分が多いか少ないかは野菜の葉の色を見れば大体わかります。
- 葉の色が緑色:健全な状態
- 葉の色が深緑色:野菜が窒素を過剰に蓄えている状態
- 葉の色が黄緑色:窒素が少ない状態
野菜に蓄えられている硝酸態窒素を減らすことはできますが無くすことはできませんので、葉の色を確認しながら化学肥料でも有機質肥料でも適量はどのくらいなのか考えながら土壌にばら撒くようにして育ててください。
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3.化学肥料の種類と特徴
化学肥料を大きく分けると、単肥(単味肥料)と複合肥料(化成肥料)の2種類に分類できます。
- 単肥:肥料の3要素(窒素、リン酸、カリ)のうち成分が単一の無機質の肥料のことをいいます。
- 化成肥料:肥料の3要素(窒素、リン酸、カリ)のうち2種類の成分以上を含んだ無機質の肥料のことをいいます。
単肥として有名な化学肥料は、
- 窒素のみの肥料:尿素(窒素約46%)、硫安(窒素約21%)、塩安
- リン酸のみの肥料:過リン酸石灰(リン酸約17%)
- カリのみの肥料:硫酸カリ(カリ約50%)、塩化カリ
が挙げられます。
※硫安、塩安、硫酸カリ、塩化カリは、副成分として酸性物質(硫酸、塩素)が土の中に残るので施肥する時は注意してください。
化学肥料はどれも速効性の肥料ですぐに肥料効果が現れますが、単肥は、窒素のみ、リン酸のみ、カリのみしか含んでいないので、家庭菜園では使う機会は滅多にないと思います。
それに対して、化成肥料は、窒素、リン酸、カリの成分がバランスよく配合されているので家庭菜園では扱いやすくよく使われる肥料です。
化成肥料の種類は、
- よく使われる速効性タイプの化成肥料
- 肥料効果がゆっくり現れるIB入り化成肥料やCDU入り化成肥料などの緩効性肥料
- 肥料の粒の表面を樹脂などでコーティングして肥料が効く期間を伸ばした被覆肥料
があります。
また、化成肥料は次のように、肥料成分が含まれる割合によって高度化成肥料と普通化成肥料に分けられます。
高度化成肥料の見分け方と特徴
高度化成肥料とは、100g当たりに肥料成分の合計値が30%以上含まれている肥料のことをいいます。
高度化成肥料の例としては、
- N(窒素):16%
- P(リン酸):16%
- K(カリ):16%
を含む肥料があるとすると、それぞれの成分を足し合わせると、16%+16%+16%=48%となり、肥料成分は100g当たりに48%含まれていることになります。
※グラムで表すと肥料成分は100g当たりに48g含んでいます。
この肥料の場合は、肥料成分の合計値が100g当たりに30%以上含まれているので高度化成肥料となります。
高度化成肥料は、肥料成分が多いので施肥する量が少なくてすみますが、根を傷めやすくなるので注意してください。
普通化成肥料の見分け方と特徴
普通化成肥料とは、100g当たりに肥料成分の合計値が15%以上30%未満含まれている肥料のことをいいます。
普通化成肥料の例としては、
- N(窒素):8%
- P(リン酸):9%
- K(カリ):8%
を含む肥料があるとすると、それぞれの成分を足し合わせると、8%+9%+8%=25%となり、肥料成分は100g当たりに25%含まれていることになります。
※グラムで表すと肥料成分は100g当たりに25g含んでいます。
この肥料の場合は、肥料成分の合計値が100g当たりに15%以上30%未満含まれているので普通化成肥料となります。
普通化成肥料は、肥料成分が少ないので根を傷めにくく家庭菜園ではよく使われています。
4.化成肥料の使い方とおすすめの化成肥料の紹介
化成肥料は、土に混ぜ合わせたり、土の表面にばら撒いて使います。
野菜を庭で育てる場合は1m2当たり100~150gくらい、プランターで育てる場合はスプーン1~3杯くらいを1回当たりに与える肥料の目安として施肥してください。
野菜の生長に必要な肥料の量の例としては、
- 肥料多め:トウモロコシ、ナス
- 肥料少し多め:キュウリ、ピーマン、大玉トマト
- 肥料普通:ミニトマト、枝豆、インゲン、キャベツ、白菜
- 肥料少なめ:こまつな、ニラ
- 肥料ほとんどいらない:サツマイモ
というように、野菜によって異なります。
また、肥料切れにならないように収穫するまでは定期的に野菜に肥料を与え続けなければいけないことを覚えておいてください。庭での栽培では2~4週間に1回、プランターでの栽培では1~2週間に1回程度です。
有機質肥料は微生物に分解されなければ根から養分を吸収できないので肥料の効き目が現れるまでに数週間かかりますが、化成肥料は無機物なので肥料を与えたらすぐに効くので扱いやすいです。
有機質肥料と化成肥料とでは、どちらの肥料を使った方が野菜が育てやすいかというと化成肥料です。窒素、リン酸、カリの成分がバランスよく配合されている普通化成肥料が適しています。
窒素、リン酸、カリが野菜に及ぼす役割は、
- 窒素:葉や茎を育てる成分
- リン酸:花や実を育てる成分
- カリ:茎や根を丈夫にする成分
なので、どの成分も不足すると野菜の生長は悪くなります。
但し、窒素は過剰になりやすいので、リン酸とカリ(実つきや根張りをよくする成分)の2成分のみ含んだ肥料を別に用意すると育てやすいです。
家庭菜園では肥料成分の含有量が、6-6-6、8-8-8とパッケージに書かれている普通化成肥料をよく使いますが、トマト、ナス、ピーマン、キュウリの栽培に特化した肥料もホームセンターに行くと販売されているので、心配な方は専用の肥料を使ってみてください。
また、いも類(サツマイモ、じゃがいもなど)やマメ類(枝豆やインゲンなど)は、窒素成分を与えすぎるとつるぼけして実着きが悪くなるので、6-6-6や8-8-8よりも、いも・マメ用の肥料の方が育てやすいです。
5.化成肥料のメリットとデメリット
一般的には化学肥料は害があって有機質肥料は安全というイメージがありますが実際は違います。
化学肥料でも有機質肥料でも野菜に与えすぎると病害虫の害が出ますし窒素成分を多く蓄えた野菜ができてしまいますので与えすぎないことが望ましいです。
これから家庭菜園を始めようと考えている方は化成肥料を使う機会は多いと思いますので、化成肥料のメリットとデメリットをいくつか挙げてみます。
化成肥料を使うメリット
- 肥料効果がすぐに現れる
- それぞれの野菜に見合った肥料分が補える
- 収穫量が向上する
- 肥料の臭いがない
- 価格が安い
化成肥料を使うデメリット
- 大雨が降ると肥料成分が流されやすい
- 野菜の味が美味しくない
- 多く施肥すると苗の根を傷めやすい
- 微生物の働きが活発にならないので土が硬くなりやすい
- 土のpHが酸性になりやすい
このように、化成肥料にはメリットもデメリットもありますが、肥料成分のコントロールがしやすいので化成肥料を使って野菜を育てないと絶対に損です。
また、1kg当たり150~400円で販売されているので有機質肥料のみで育てるよりも費用の節約につながります。
但し、野菜の収穫量を増やしたいなら化成肥料のみで十分ですが、色つやが良く甘みがある美味しい野菜を育てようと考えている場合は、有機質肥料と化成肥料を使い分けることが重要です。
有機質肥料を与えると色つやが良く甘みがある野菜が育つので、元肥として有機質肥料を与えて、追肥として有機質肥料と化成肥料を混ぜ合わせて使う方法がおすすめです。
化成肥料はどちらかというと追肥に適している肥料だと思います。
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